基礎知識 — 主な成分
内因性・植物性・合成カンナビノイドの違い
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基礎知識 — 主な成分
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「カンナビノイド」と一括りに語られる物質群には、実は どこで生まれたかが違う 3 つのグループ がある。人体の中で自然に作られるもの(内因性)、大麻草から取れるもの(植物性)、実験室で人工合成されたもの(合成)の 3 種類。本記事はそれぞれの特徴と相互の関係を整理する。
人体は、必要なときに脂肪酸誘導体として アナンダミド(AEA) や 2-AG を合成し、CB1/CB2 受容体を介してシグナル伝達を行うと報告されている。これらは「合成と分解のバランス」で機能を調整する短命なシグナル分子である(詳しくは別記事「エンドカンナビノイド・システム」を参照)。
Cannabis sativa L. には 100 種類以上のカンナビノイドが同定されているとされる。代表的なものは Δ9-THC、CBD、CBN、CBG、CBC、THCV など(詳細は「主要カンナビノイド入門」記事を参照)。
植物性カンナビノイドの薬理学的特徴:
カンナビノイド類似化合物は、エキナセアやコパイバ、カバなど他の植物にも限定的に見つかっているとする報告があるが、Cannabis sativa が最も多様なカンナビノイド供給源である。
合成カンナビノイドはさらにいくつかのカテゴリに分かれる。
なお エピディオレックス (Epidiolex) は植物由来 CBD の高度精製製剤であり、合成カンナビノイドではない。臨床用途では他の医薬品と同様に標準化された製剤として扱われる(植物性カテゴリの代表的医薬品例)。
日本では 2010 年代以降、これらの違法系合成カンナビノイドが指定薬物として順次規制されている。
近年、ヘンプ由来 CBD を化学変換して作られる Δ8-THC、HHC、HHC-O、THC-O などが「合法ヘンプ由来」をうたって流通する例が増えている。これらは植物性と合成の境界に位置し、各国で規制対応が進んでいる。日本では指定薬物制度のもと、順次規制対象に追加されているとされる。
植物性 Δ9-THC は CB1 の 部分作動薬 であり、過剰摂取しても受容体反応は飽和する。一方、違法流通の合成カンナビノイドは多くが 完全作動薬 で、用量応答がより激しい。これが急性有害事象の重症度の違いに関わるとする研究が報告されている。
内因性カンナビノイド系を標的とした FAAH 阻害薬・MAGL 阻害薬や、CB2 選択的作動薬など、副作用を抑えた治療薬の開発が進められている。一方で、2016 年フランスでの FAAH 阻害薬臨床試験における重篤有害事象(BIA 10-2474 試験)など、開発の難しさも明らかになっている。
カンナビノイドには「内因性・植物性・合成」という 3 つの起源があり、それぞれ薬理特性と規制が異なる。特に違法流通の合成カンナビノイドは、植物性 Δ9-THC とは作用強度が異なり、より重篤な有害事象が報告されている点に注意が必要である。日本においては大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入が大麻取締法および関連法令で規制され、違法系合成カンナビノイドや一部の半合成カンナビノイドは指定薬物制度で別途規制されている。
出典 — Sources
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