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1996 年 11 月 5 日、米国カリフォルニア州で住民投票により可決された Proposition 215(プロポジション 215、別名 Compassionate Use Act of 1996、慈悲ある使用法)は、米国で初の州レベル医療大麻合法化 を実現した法律である。これは 1937 年マリファナ税法以来 60 年ぶりに、米国の州レベルで大麻使用の合法的経路を開いた 歴史的な転換点であり、後の世界的な医療大麻合法化の波の起点となった。

概要

  • 可決日: 1996 年 11 月 5 日(米国大統領選と同時の住民投票)
  • 正式名称: Proposition 215 / Compassionate Use Act of 1996
  • 可決の方式: 住民投票により賛成 56%、反対 44% で可決
  • 主な内容: 医師の推薦 がある場合に限り、患者および介護者(caregiver)による大麻の 所持・栽培 を州刑法上の処罰対象から除外
  • 対象疾患: がん・AIDS・慢性疼痛・痙縮・てんかん・偏頭痛・関節炎・拒食症など、医師が大麻が有用と判断する疾患(具体的疾患リストの限定はない)
  • 影響: その後 30 年で米国 38 州以上が医療用合法化を実施するきっかけとなった

詳細

可決の背景

1980 年代から 90 年代の社会的文脈

1980 年代以降、米国では AIDS 危機 の中で、患者の食欲不振・悪心・体重減少への対処として、医療目的の大麻使用 を求める声が高まっていた。サンフランシスコを中心に、患者団体 が医療用途での大麻アクセスを訴える運動を展開した。

「カナビス・バイヤーズ・クラブ」

サンフランシスコを拠点に デニス・ペロン(Dennis Peron)らが運営した「サンフランシスコ・カナビス・バイヤーズ・クラブ」は、AIDS 患者を中心に医療目的での大麻供給を行う非公式組織として知られた。これがカリフォルニア州の住民発議運動の母体の一つとなった。

主導した活動家

  • デニス・ペロン: パートナーが AIDS で亡くなった経験を持ち、医療大麻運動を主導
  • ヴァレリー・コラル(Valerie Corral): 自身がてんかん患者で、医療大麻の研究と提唱で活動
  • 科学者・医師: 全米の一部医師・研究者が運動を支援

法律の構造

Proposition 215 は カリフォルニア州健康安全法典 11362.5 条 として成文化された。主な内容:

  • 医師の推薦(recommendation、処方ではなく書面または口頭の推薦)がある場合、患者と介護者は大麻の 所持・栽培・使用 が州法上の処罰対象から除外される
  • 対象疾患は包括的: がん、AIDS、慢性疼痛、痙縮、てんかん、偏頭痛、関節炎、拒食症などが例示され、その他「医師が大麻が患者の健康に有用と判断するあらゆる疾患」を含む
  • 連邦法との関係: Proposition 215 は 州法の特例 にすぎず、連邦法(規制物質法 Schedule I)では引き続き違法

連邦法とのギャップ

Proposition 215 可決後、連邦法と州法の二層構造 が生じた:

  • カリフォルニア州内で医療目的での大麻栽培・所持・使用 → 州法上は合法
  • 同じ行為が連邦法上は違法 → DEA(連邦麻薬取締局)による執行の対象となりうる
  • 1996-2010 年代には、連邦執行による医療大麻ディスペンサリー(調剤所)の摘発が頻発した
  • 2013 年 Cole Memo(連邦司法省の通達)が連邦執行優先順位を緩和し、2018 年に撤回されるなど、連邦と州の関係は変動してきた

後続の影響

Proposition 215 をきっかけに、米国の 医療用大麻合法化の波 が広がった:

  • 1998-2000 年: アラスカ、ワシントン、オレゴン、メイン、ハワイなどで医療合法化
  • 2000 年代: ネバダ、コロラド、モンタナ、バーモント、ロードアイランドなど
  • 2010 年代: 各州で順次合法化、2026 年現在 38 州以上が医療用合法化
  • 2012 年: コロラド・ワシントン州で 嗜好用合法化 が住民投票で可決(米国初)
  • 2018-2024 年: イリノイ、ニューヨーク、ニュージャージー、ミネソタなど嗜好用合法化が拡大

世界的にも、Proposition 215 以降の米国の動きは 2018 年カナダ嗜好用合法化、2024 年ドイツ部分合法化 など、各国の医療・嗜好用合法化議論の参照例となった。

制度的進化

Proposition 215 は当初、医療大麻の供給ルート を明確に定めていなかったため、運用上の問題が継続的に指摘された。後の州法で:

  • 2003 年 SB 420(Medical Marijuana Program Act): 医療大麻 ID カード制度、栽培上限などを整備
  • 2015 年 MCRSA(Medical Cannabis Regulation and Safety Act): 医療大麻の生産・流通の規制枠組み
  • 2016 年 Proposition 64: 嗜好用合法化が住民投票で可決
  • 2018 年 MAUCRSA 統合法: 医療・嗜好用の規制枠組みを統合

現在の論点・最新動向

連邦法の Schedule III 引き下げ議論

2024-2026 年にかけて、米国 DEA・HHS は大麻の連邦法での Schedule III への引き下げ(リスケジューリング)を議論している。これが実現すれば、Proposition 215 以来の連邦法と州法のギャップが大きく縮小する可能性がある。詳しくは別記事「米国 DEA の大麻リスケジューリング」を参照。

医療大麻の評価

カリフォルニア州を含む医療合法化州での 長期実績 は、医療大麻政策の効果を評価する研究材料となっている。慢性疼痛・がん緩和ケア・難治性てんかんなどの分野で、患者の治療選択肢としての位置づけが評価されてきた。

国際的な参照例

カリフォルニア州の Proposition 215 は、カナダ、欧州、イスラエル、オーストラリア、タイ など各国の医療大麻プログラム策定で参照例として引用された。法律の包括性、医師の推薦制度、患者中心の運用などの設計思想が議論された。

まとめ

1996 年カリフォルニア州 Proposition 215 は、米国で初の州レベル医療大麻合法化 を実現した歴史的な法律であり、その後 30 年にわたる 世界的な医療大麻合法化の波の起点 となった。連邦法とのギャップ、運用上の課題、後続州法による補完など、複雑な経緯を辿ってきたが、医療大麻政策の代表的な参照例として位置づけられている。日本国内では大麻草・大麻製品の所持・使用・栽培・輸出入は大麻取締法および関連法令により規制されており、本記事は歴史的経緯の解説を目的としている。

出典

出典 — Sources

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