基礎知識 — 産業と環境
ヘンプクリート建築 — カーボンネガティブ建材の可能性
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ヘンプクリート(Hempcrete)は、大麻草の茎の芯と石灰・水を混ぜた建材。役割はコンクリートに似ているが、決定的に違うのは 生育時に CO₂ を吸収し、建材として長期間固定する という点。製造から使用までで吸収量が排出量を上回る「カーボンネガティブ素材」(carbon-negative、削減ではなく削除する素材)として、欧州を中心に住宅採用が広がっている。
ヘンプクリートは、産業用ヘンプの茎を加工した ヘンプハード(茎の木質部、ヘンプシブとも呼ばれる)を主原料とする。これに 石灰系バインダー(消石灰や水硬性石灰)と水を混ぜ、型枠に充填して固化させる。
ヘンプクリートが「カーボンネガティブ建材」と呼ばれる根拠は、ライフサイクル全体での CO₂ 収支が負になる(吸収が排出を上回る)とする研究があるためである。
これらを合わせて、ヘンプクリート建材 1 m³ あたり 数十〜100 kg 程度の CO₂ を固定 するとする研究が報告されている。具体的な数値は研究・前提条件で変動する。
ヘンプクリートには以下の課題も指摘されている:
フランス はヘンプクリート住宅の最大市場のひとつで、年間数千棟規模で採用されているとされる。イギリス でも公共住宅・住宅リノベーションでの採用例が増えている。ベルギー、オランダ、ドイツ、スペイン でも住宅・商業建築での採用が広がっている。
米国では ANSI/ASTM の建材規格 に組み込まれ、複数の州で建築基準法上の認可建材としての地位を獲得した。住宅・商業建築での採用が徐々に広がっている。
日本では産業用ヘンプ栽培の認可制度が 2024 年改正大麻取締法のもとで再整理されたことから、ヘンプクリート建築の 国内供給チェーン の構築が本格化していると報じられている。栃木県・北海道などでの実証プロジェクトや、文化財建造物での採用検討が始まっているとされる。国産ヘンプ供給の安定化 が今後の普及の鍵となる。
世界的な 建築セクターの脱炭素化 議論の中で、ヘンプクリートは「自然由来の素材で代替可能なコンクリートの一部」として位置づけられている。コンクリート産業は世界の CO₂ 排出の約 8% を占めるとする推計があり、その代替・補完素材としての可能性が研究されている。
ヘンプクリートは、産業用ヘンプの茎の芯部を石灰と組み合わせた建材で、カーボンネガティブ素材 として欧州を中心に住宅・商業建築への採用が広がっている。構造体には使えないが、断熱性・調湿性・防火性に優れた 非耐力壁の充填材 として機能する。日本では 2024 年改正大麻取締法のもとで産業用ヘンプ栽培の認可制度が整理され、国内供給チェーンの構築と建築用途への展開が本格化していると報じられている。
出典 — Sources
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